NEW YEAR'S CARDS of TAKEO KAMIYA
神谷武夫の年賀状・回顧展 |
神谷武夫
それでも子供時代には 何の疑問も持たずに、正月には 年賀状を出すものだと教えられ、毎年せっせと年賀状のための木版画などを彫っていました。今 さがしてみると 版木はありませんが、刷ったものが たった一枚だけ 残っています。おそらく最後のものでしょうが、文楽人形の「三番叟」の首(かしら)を彫ったもので、中学3年生の時かと思います。黒と赤の二色刷りで、黄色は 筆で彩色したものでしょう。しかし これのあとは、年賀状を出すのを やめてしまったようです。
中学3年生のときの 年賀状
年賀状 1973
一方、「元号」というのが あまり好きでないので、年賀状には「昭和」とか「平成」とか書いたことがありません。ただ、それが いつ出したものか解るように、世界的に通用する「西暦」の「年号」だけを入れています。
年賀状 1979
しかしながら、自然界とは無関係に、人間が勝手に作った「年」があけて1月1日になったからといって、「おめでとうございます」などと書く気には どうしてもなれず、そこから最も遠そうな言葉を探した結果、「頌春」に落ち着きました。春が来るのを頌するというのは 人間の自然な感情であって、これなら「うしろめたい」気持ちにならずに済むと 感じたのでしょう。以来30数年にわたって、年賀状には「頌春」と書き続けています。
年賀状 1980
ずっと一人で仕事をしてきて、住居と事務所が一体なので、年賀状は
この年に「頌春」という言葉の書体と大きさが確定し、
年賀状 1981
年賀状 1982
年賀状 1983
年賀状 1984
ド-ム屋根の頂部に、「初日の出」のような円を 朱肉でスタンプすると、
年賀状 1985
年賀状 1986
訳書『イスラムの建築文化』の出版の目途が立たなかったので、
年賀状 1987
この住宅の建主は ヒサゴ の若いオーナーですが、かつてロシア文学の
年賀状 1988
この前年に、最初の訳書『イスラムの建築文化』が やっと出版されました。
年賀状 1989 『楽園のデザイン』は この年の6月に出版され、多くの書評が出ました。
年賀状 1990
この年「文化の翻訳、伊東忠太の失敗」という重要な論文を書きます。
年賀状 1991
前年までの年号の数字が小さすぎたので、この年から だいぶ大きくしました。
年賀状 1992 私の建築作品の竣工写真は、すべて 写真家・斎部功の撮影です。
年賀状 1993 この年『at』誌に「インド建築−ジャイナの小宇宙」を連載しました。
年賀状 1994 この年 12回目のインド旅行をして、インド建築の撮影を完了します。
年賀状 1995
この前年末、ヒサゴ のオーナーの小川さんに勧められて、初めてパソコン
年賀状 1996
この年は、人々の 口の端に乗り始めた「インターネット」の勉強をして、
年賀状 1997
この年に 年号の書体と大きさが確定し、以後 現在に至るまで これを用いています。
年賀状 1998 この年『 建築フォーラム 』誌に 創刊号から「インドの木造建築」を連載しました。
年賀状 1999
パソコンを駆使して HP まで自作しているのに、図面はずっと手描きでした。
年賀状 2000
この年、朝日カルチャーセンター (東京) で「インド建築史」の講座をもちました。
年賀状 2001
この年、東大助手(後に教授)の村松伸から依頼されて、
年賀状 2002
この年『建築東京』誌に「インド・ヒマラヤ建築紀行」を連載しました。
豊島区から北区への転居通知を兼ねた 年賀状 2003
年賀状 2004
年賀状 2005
年賀状 2006
前年に、同級生の須田君の紹介で 小学館から『インド古寺案内』を出版。
年賀状 2007
「今月末に 彰国社から『イスラーム建築』を出版します」とありますが、
年賀状 2008
年賀状 2009
前年まで、私の名前を 一枚一枚 手書きで入れていましたが、歳とともに
その上の文:「2年前に出版予定だった『イスラーム建築』は、相変わらず
年賀状 2010
年賀状 2011
この年の3月11日に「東日本大震災」が起こりますが、その翌朝、
年賀状 2012
ジャイナ教の建築の本は、ついに書くことができませんでした。
年賀状 2013 この年、3番目のホームページ「アルメニアの建築」を立ち上げます。
年賀状 2014
年賀状 2015
前年に、マフィアの圧力による 全ての出版社の出版拒否によって
年賀状 2016
年賀状 2017
年賀状 2018
年賀状 2019
年賀状 2020
年賀状 2021
年賀状 2022
年賀状 2023
年賀状 2024
私は、年賀状というのは、多数の人々へのダイレクトメールではなく、一人一人の友人、知人への「挨拶」だと思っているからです。 私の住所録は、昔ながらの 手書きのカード式です。 その「書き加え型」のカードを一枚ずつ見ながら 宛名を書いて行く間、わずか数分かもしれませんが(時には数十分も 物思いに ふけります)、相手の顔を思い浮かべながら、その人との それまでの付き合いや 近年の仕事や生活について想うのが、私の その人への「挨拶」です。 もしも 宛名シールを一度に打ち出して ペタペタ貼っていけば、相手の顔を思い浮かべることさえ 無いのではないでしょうか。 それでは 効率はよくとも、企業のダイレクトメールと同じです。 枚数が多いからといって、家族に代筆させたり、宛名書きのアルバイトを雇ったりするのも、そうでしょう。 宛名をパソコンから打ち出すのは、「自分の字が 下手だから」と言う人もいます。 しかし、「乱暴な」字というのは あっても、「下手な」字というのは ありません。 どんな字でも「丁寧に」書かれた字は、個性のある「美しい」字です(パソコンの 機械的で画一的な字よりも はるかに)。
また 年賀状の「うら面」についても、私は 印刷屋で印刷してもらったことは 一度もなく、すべて 自宅のコピー機での、手間暇かけたコピーで作成しています。 きれいな、くっきりしたコピーにする「秘訣」は、図面や文字を 大きなもので用意し、それをレイアウトした上で、葉書に 50パーセントぐらいの縮小コピーをすることです。 と、一端(いっぱし)なことを書きましたが、それらは 全て「程度問題」に過ぎません。 私はこのようにしている、というだけのことなので、あまりお気にされないよう。
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